学校公開
今日は、学校公開だった。
久しぶりに、授業を受けている次男(小3)の様子を見た。
去年の2学期までは、母子同伴登校で、びっっっしり教室に付き添っていて、付き添っているのに教室に入れなくて…ということもしょっちゅうだった。
3学期は、付き添いを一切やめた。だから、「行けない日」が圧倒的に増えた。それでも、もし「行ける日」があるとすれば、それは「一人で行ける日」だったので、日数は少なくても、そっちの道を選んだ。
そして、4月。朝から帰りまで、完全に一人で登下校している。始業式の日から、1日も休んでいない。
もちろん私は付き添っていない。
だから、去年の12月以来の…、教室で授業を受けている次男の姿。
元気に頑張っていた。
去年も、学校で授業を受けられることはあったけど、そのときのような痛々しい緊張感はなかった。
緊張はしてるんだろう、疲れてもいるだろう、たいへんな思いもしているだろう…、そういうのを私は端々から感じたけど、でも、笑顔もあり、声も出ている、何より、休み時間になっても私の方に来ないで、自分のペースで過ごしていることが本当に嬉しかった。
以前は…、休み時間になると私のそばに貼りつくようにして、「お母さん…頭が痛くなってきた…」「気持ち悪い…帰ろう…もう帰りたい…無理…無理…」と弱々しい声で呟き続けたものだった。
学校公開はたくさんの保護者が授業を見に来る。
次男はそれを嫌って、土曜日の公開授業の日に登校できたことは今までなかった。
ただでさえも緊張して気持ち悪くなるのに、お父さんお母さんたちが教室の中で見ている状態で、授業なんて受けられない、と言っていた。
それが昨日は、「お父さん、明日見に来て!担任の先生がどんな先生か、お父さんにも見てほしいよ!」って。
私は、担任の先生にそのことを伝えながら、泣いてしまった。
緊張しすぎて、きちんと座っていられない次男の様子。
だらーっと机に半分寝そべるような姿勢になったり、足をしょっちゅうぶらぶらさせて落ち着かなかったり、勝手にノートをしまったりしている。
挙句には、みんながノートに何かを書いている時間なのに、歌い始めてしまった。
わりと大き目な声で、トトロの歌を歌っている。なかなかやめない。
周りが、「歌うなよ!」「うるさいよ!」と注意しても、止まらない。
見回りしていた先生が、「あれ?歌っているのはどなた?」と振り向いて、みんなが「将吾くん!」と言ったら、先生はただニコッと笑っただけだった。
次男は歌うのを止めた。
不安が高まったり、緊張したり、怖い気持ちになると、逆にはしゃぐタイプなのだ、次男は。
そのことを、私はこの1年を通して、痛いくらい思い知った。
そわそわと落ち着きなく動き回ったり、家の中で飛びはねまくったり、食事の最中なのに口にモノが入ったままトランポリンを跳んだり、絶え間なく繰り返してきた。
「そういう子」なのかなと思って、悩んで、投薬治療も考えたけど、そういう診断が下りなかった。
そして、不安だとそういう言動で緊張を紛らわすんだ、ということに辿り着いたころには、その症状は消えていた。
新しい担任の先生に、あらかじめそのことを伝えておいて、なおかつ正確に理解してもらえて、本当によかったと思った。
はしゃぐ子、元気な子、やんちゃで動きの激しい子、注意しても聞かずに何度も同じことを繰り返し、ちっとも聞いていない子。
そういう風に、見えてしまうのだ、次男は。そして明るくふざけまくっているので、「おちゃらけキャラ」だと思われるのだ。外見もサルっぽいし。
だからもちろん、ガツン!と怒られる。何度でもガツンとやられる。でも、怒られれば怒られるほど、不安が高まって、ヒートアップしてしまう。
そしてガラス細工のように脆い彼の心は、簡単に壊れてしまうのだった。
もともと幼稚園時代から、彼の度を越した動き回り方には手を焼いていたので、入学した最初から私は、当時の担任に、「授業中、動き回ったりしていませんか」「立ち歩きはありませんか」「きちんと座っていられずに、椅子からずり落ちたり、後ろ向きに座ったりしていませんか」と、ことあるごとに何度も訊いた。
その答えはいつも決まって、「いいえ、しっかり座って、集中して授業に取り組んでいますよ」「逆に、将吾くんってそんなに動き回るんですか?全然イメージがないんですけど」「休み時間も、まあ元気に遊んでますけど、そんな…よじ登ったりとか全然ありませんよ」だった。
今思えば…、担任の先生が怖すぎて、緊張しすぎて、微動だにせずに授業を受けていたんだろうなと思う。
当時のノートを見返すと、異常な筆圧の高さで文字を書いていて、数ページ先にまで痕が残るくらいだった。
そして1年生の3学期には、学校に行けなくなった。
だから、今、次男が新しいクラスで、そんな風に机にだらーんと伸びてみたり、歌ってみたり、ソワソワして落ち着きなくしていたり…は、「ああ、出せてるんだな」と思う。
新しいクラスの緊張、1年間休んだことの焦り、ずっと教室にいる疲れ、などを、自分なりに出してバランスを取っている。
もともと、きちんとした子だから、時期が過ぎたら、落ち着いて座って授業を受けられるだろう。
次男は今、1年生のときにできなかったことを、学校で取り戻している。そんな感じがした。
…と思いつつ、長男(小5)を見に行ったら、こっちもまあ、びっくりするくらい、安定の自由人ぶりだった。ひどい。
授業中なのに、私の姿を見つけるなり、「あっ!お母さん!俺、やっぱり視力検査の結果Cだったから、メガネ買ってね!!」と大声で呼びかけてくる。頭の毛穴が全部開いた。
思わず、「しーっ!」と制したら、先生が「ハイ。Cですね!」って拾ってくれた。
授業中の不規則発言も多いなあ…。独り言なのか、発表なのか、どっちつかずの感じで好きなように喋っている。頭の中に浮かんだことが、口からモロモロモロって漏れ出てくる感じ。
でも、見た感じ…、喋らないまでも、男子はだいたい、なんかこうチョロチョロ落ち着きがない子が多い。逆に女子はびっくりするくらい大人っぽい。
性差がはっきりしてきた。高学年ってこういうことなんだな…。
長男は、好きな感じでフラフラ首を動かして何かを眺めたり、かと思えば手元の紙には一文字も記入せずにボーッとし、いざほかの人がその用紙を見ながら立派な発表をすると、「ほわぁ。すげえなあ!」と大声で感心している。挙句、「お母さん!今の発表すげえね!」と小声で(口パクで)同意を求めてくる。
いいから!前を!向け!と身振り手振りでやりながら、なんかもう、この人は、ずっとこうなんだろうなーと、本当の意味で納得した。
今まで、何とか直そう、正そう、矯正しなくては、と焦り、ハラハラして気を揉んで、先回りして先生や友達に理解を求めようとしたり、それが叶わずに腹を立てたり傷ついたりしてきたけど、いやーもう、そういうの必要ないな、っていうか無意味だな、って心から思った。
授業をあからさまに妨害したり、クラスメイトに危害を加えたり、そういう感じだったらまた対処も必要になってくるけど、なんか長男は、「大声でのんきなひとりごとを言ってウフウフしている面白いおじさん」になるんだろうな、っていう感じがした。KYだけど無害なタイプです。
小さい時、もっとこうキーキーギャーギャーしてこだわりが強すぎて、「この子は長じて、キモ賢い路線で行くしかない」と思ったものだったけど、意外とキモさも薄れてきた(そして大して賢くもなかった。まあふつう)。キモくも賢くもないけど、マイペースで面白い感じだな。それがこの子の個性なんだろう。
何より、他人の頑張った成果や面白い発言などに対する、彼の手放しの称賛ぶりは、ちょっと特別な感じだ。妬んだり僻んだり、いじけたり、スネたり、貶したり、っていうことがびっくりするくらい、無い。素直なんだと思う。そこ、大事にしてあげたい。
久しぶりの学校だったし、授業の様子を見ながら、「ちゃんとしなさい!!!!」っていう気持ちにならなかった自分の変化が、とても興味深い1日だった。