憎しみを抱くことは怖くない

 子どものことを、可愛くない、憎い、顔も見たくない、消えてほしい、ってギリギリギリギリ奥歯を食いしばりながら必死でそれらの気持ちを殺して、何とか地獄の底から這いあがってきたような1年だった。今、次男にも娘にも、そういう気持ちを抱くことは、ない。
 進行形の時には、誰にも、誰にも、言えなかった。

 言葉にするのも恐ろしかった、言霊を信じているから。

 今は、まるでフィクションを語るのと同じように、あんな気持ちがあった…ということを言語化できる。

 …あんなにも、強い憎しみ、どす黒い怨み、顔も見たくないし声も聞きたくないと真剣に心底から、叫び出しそうな、悲鳴にも似た激しさで思い詰めていたのに…、なのに、あんなにも強かったものが、こうやってきれいに無くなるんだな…。

 だから、もし、そういう気持ちを子供に対して抱いてしまうほど追い詰められている人がいたら、私、「だいじょうぶだよ」って言ってあげたい。

 渦中は地獄の苦しみだけど、でも、もう一回生まれたような気持ちで…、自分の子供を、心から可愛いと思えるときが来る。

 特に娘を、こんな風に抱きしめられるなんて想像もできなかった。

 だから、子供を憎いとか嫌いとか思ってしまっても、怖くないよ…。

 …怖くない、ということを、今、自分にも言い聞かせている。なぜなら長男との決戦が残っているから。 
 きっと遠からず、また、蓋を開ける日が、来る。…こうやって気づいてしまった以上、それは、避けられない。

 でもきっと、またいつか…、乗り越えて、笑って振り返ることができるはずだと信じる。